第3話「20歳アメリカ旅、Josephとの出会い。」
著書『英語日記BOY』より、一部を無料公開します。(p33~40 ↓)
20歳アメリカ旅
2014年夏。20歳の誕生日、僕はアメリカにいた。
前年のアメリカバンドの来日ツアーから1年が経ち、次は自分がアメリカに行くことを決意したのだ。
ロサンゼルス郊外で、昔から好きだったアメリカのバンドのライブがあった。しかしその会場は、宿から電車とバスを乗り継ぎ3時間以上かかる僻地にあった。終演予定時間には終電もなく、「行ってしまったら帰れない」ことが確定していた。
それでも僕は行った。
いま考えると浅はかだったが、野宿をすればいいと思った。
Josephとの出会い
初めてアメリカで観た大好きなバンドのライブは格別だった。しかし、終演後からが本番だった。
外に出て野宿できそうな草陰を探していると、その挙動が不審だったのか、同じくライブを見に来ていたひとりのアメリカ人が「どうしたの?」と話しかけてくれた。Joseph(ジョセフ)という25歳の青年だった。
拙い英語で事情を説明すると、「危ないから野宿は絶対にだめ!」と言い、車で僕を宿まで送ることを提案してくれた。
深夜、というかほとんど明け方に僕の宿に着き、彼はいまから、再び数時間かけて家に帰ると言う。
申し訳なさ、感謝、色々あるが、自分の英語力不足のせいで、“I’m sorry, Thank you.”くらいしか出てこない。
すると彼は、こう言ってくれた。
Don’t say sorry, we’re friends. I’m always here for you.
(ごめんはいらないよ。僕たちは友達だから。いつでも味方だよ。)
“I’m always here for you.”(いつでも味方だよ。)
あまりにかっこいいフレーズだったから「もう一度ゆっくり言って」とお願いし、毎日つけている日記帳の端にメモした。彼は恥ずかしそうだった。
「英語日記」のはじまり
宿に戻り「感謝 英語表現」とネットで検索したら次のフレーズが出てきた。
I appreciate your kindness.
(あなたの優しさに感謝します。)
このフレーズを、彼にメールで送った。
そして、日記にメモした「彼の言葉(I’m always here for you.)」の横に、いま送った「感謝のフレーズ(I appreciate your kindness.)」も書き留めておいた。
次にこのような素敵な出会いがあったとき、すぐに感謝を伝えられるように。僕はもう「言えなくて悲しい」と後悔したくなかった。
そのとき、あることに気づく。
そうか、僕は「いつか自分が言うであろう英語フレーズ」を、先回りして知っていなければならないんだ。
そして再び考える。
「この先どんなことを英語で話すんだろう?」
未来の生活を完全に予測することはできないが、今回のジョセフとの出会いでもわかったように、最低限「今日起きた出来事」や「今日抱いた感情」のなかで、特に「言えるようになりたいと思ったフレーズ」をいまのうちに練習しておけば、いつか再び海外に行ったとき、必ず使うチャンスがくるはずだ。
「今日起きた出来事」と「今日抱いた感情」か…
ん?それってつまり「日記」じゃないか?
日本語の日記に書いてしまうような内容が全て英語で言えるようになれば、僕にとっての「英語が話せる」をクリアできる。
また、日記に出てくる言葉には必ず「ドラマ」があった。
来日バンドに伝えられなかった「高校生の頃から聴いてきたんです」というフレーズ。ジョセフに伝えられなかった「感謝を伝える」フレーズ。
どれも、教科書例文とは比べ物にならないくらいの思い入れがある。実際に日常で出会った「ドラマのあるフレーズ」を、僕たちは忘れないのだ。
決めた。
僕は「日記」で英語を勉強する。
これが「英語日記」のはじまりだった。
Profile
Rio Arai 新井リオ
イラストレーター/作家/ミュージシャン
イラストレーターとしてAdobe CC Logo Remix、WIRED.jp連載イラストなどを手がける。著書『英語日記BOY』がAmazon英語の学習法ランキング1位を記録(現在12刷、7万部)。バンドPENs+のボーカルとして日本で4枚のCD、アメリカで1枚のレコードをリリース。
中田さんのユーチューブから飛んできました。単行本はアマゾンで売り切れでした、kindle版で購入します。私は中国語を学んでいますがどの語学にも応用できる勉強法に感動。ただ素晴らしい方法の上にも新井さんはかなり努力されたこともよく分かりました。やはり継続は力なり。私もこの方法で中国語を習得します。素晴らしい教えをありがとうございました。