「留学するべき人」と「留学する意味がない人」の違い
「英語が話せるようになりたい」人の数、かなり増えてませんか?
いま、「周りを見渡せば一人は留学している」レベルで、みんな留学していますよね。
でもみんな、「なんで留学したい」のでしょうか。
今日は、自分の経験も踏まえ、僕の思う留学の本意について話します。留学を考えている全ての大学生、また海外に興味のある社会人の方に読んでほしいです。
「留学しないほうがいい人」と「留学したほうがいい人」
僕は基本的に、留学大賛成派です。
ただ、とりあえずなんでもかんでも留学したほうが良い、とは思いません。
それは、「留学しないほうがいい人」と「留学したほうがいい人」がいると思うからです。
《留学しないほうがいい人》
・留学したら英語が話せるようになると思っている人
・面倒くさいことが嫌いな人
・漠然と、いつか何かに役立ちそうだと思っている人
《留学したほうがいい人》
・英語以外に「海外でやりたいこと」がある人
・なんでも自分でやるのが好きな人
・純粋に英語・海外が好きな人
このように、先天的な向き・不向きがあると思います。
ただ、この記事は、みなさんに「留学をさせない」目的で書くものではありません。可能な限り多くの人に「本当に意味のある留学」をしてほしいという思いで、解決策となる考え方を僕なりに書いてみます。
1年間の留学ではペラペラにはならない
早速ですが、正直、1年間の留学レベルで英語がペラペラにはならないというのが僕の意見です。
いま、巷には「1日5分、聞き流すだけ!」といった教材や、「ここに通うだけでだれでもペラペラに」といった留学情報ががたくさんあります。
しかし冷静に考えて、語学とは「〇〇するだけ」といった受動的なスタンスでだれでもマスターできるものではありません。それは、僕らが何年かけて日本語を学んできたかを考えれば一目瞭然なはずです。
だからこそ「留学したら英語が話せるようになると思っている人」は一度考えを改める必要があるかもしれません。
キーワードは “自分でやる”こと
僕自身、語学学校に通う一般的な留学をせず、5年以上独学で英語を勉強しています。2016年からはカナダで1年半デザイナーとして仕事もしました。
ネイティブレベルとはいえませんが、特に不自由なく英語が話せる…と思っています。
ここで思うのは、僕は「留学したから」ではなく「勉強したから」英語を話せるようになったということです。
もちろん、学校も参考書も、スキルを助長させるのに非常に役立つと思います。
しかし、基本的に語学習得は「能動的なおこない」であり、
自分で調べて、
自分で覚えて、
自分で応用して、
…と、時間をかけて体内に取り込んでいくものであり、誰かから教わって自然と身につくスキルではないのです。
そのため、留学という“環境”に甘えてしまうと、すこし危ないのかなと思います。
逆に言うと、実は日本にいながら自分でやる勉強で、かなりのレベルまで英語力を上げることができます。
本当に英語が話せるようになる人は、留学する前から自分で勉強しています。
日本でできる詳しい勉強法はこちらの記事「独学3年間の努力と道のり。日本で英語が話せるようになった僕の勉強法」に書いています。
「海外でやってみたい英語以外のこと」の重要性
これは意外かもしれませんが、「英語が話せるようになりたい」と思った時、
「海外でやってみたい”英語以外のこと”」がある人の方が、伸び率がいいと思います。
なぜなら、あくまで英語はコミュニケーションのツールだから。これはカナダにきてから強く実感しました。
英語を「勉強対象」として捉えていると、おそらくモチベーションが続かなくなる瞬間がやってきます。
「なんとなく留学しておいた方が役立ちそう」くらいの気持ちで、1日5~6時間、1年間毎日勉強できるでしょうか?
このままだと多分、「なんとなく外人とコミュニケーションが取れる人」で終わってしまいます。
一方で、「海外で好きなこと・やりたいことを成し遂げるために英語を使う」という状況であれば、
・自分の好きなことと絡んでいるのでモチベーションが続く
・“使えるようになっていく過程”に楽しさを見出せるので英語力が伸びやすい
・使う分野が明確なので現地人の交流が生まれやすい
と、良いことだらけです。
オリジナル留学をつくる
「好きなこと・やりたいことはあるけど、それを海外とどう結びつけていいかわからない」という方。
オリジナル留学を作ってしまうのはどうでしょうか?
例えばですが、
・音楽が好きなら、ライブに頻繁に行って、現地の友達を毎週1人作る。または、現地でできた友人とバンドを組むことを目標にする
・スポーツが好きなら、現地のコミュニティがやっているチームに参加し、大会に出る
・食べ物が好きなら、日本人向けに現地のレストランの食べログを作って発信してみる
・アートが好きなら、現地の美術館/博物館をめぐって、Instagramに1日1つレビューを載せる
とか…どうでしょうか。
「海外に行く→英語の勉強だけする→帰国」より、単純にワクワクしませんか!
海外に来た意味がありますよね。
もちろんここまでオリジナルな留学ではなくても、勉強したい分野がすでに決まっている人は、語学学校ではなく現地の大学やカレッジに通うなど、できることはたくさんあります。
また、これだけ明確な趣味があれば、友達もすぐできると思います。
この前トロントのLanguage Exchange(日本語と英語をお互いに教えあう会)で知り合ったPeterという男性が、
『英語が上手いとかより、普通に趣味が合って性格が良い日本人と友達になりたい』
と言っていて、僕が逆の立場だったとしてもそうだなと思いました。
まとめ①
留学したら勝手に英語が話せるようになるわけではないからこそ、「オリジナル留学」をつくり、そのプロセス自体に楽しさを見出せるような充実した海外生活を送る
留学は面倒くさいけれど、タフになれる経験
留学、正直はめちゃくちゃ面倒くさいことばかりです。
・家を探す
・携帯を契約する
・銀行口座を作る
という、日本でやるのも結構大変なことを現地の言葉でやらなければいけないし、
・レストランでメニューを選ぶ
・髪を切る
という日本で当たり前にできることが、かなりの労力を使う出来事になったりします。
他にも、
・バイトの面接
・研修〜働けるようになるまで
全て英語です。
もちろん、現地には日本人経営のレストラン、美容院、会社、サポートエージェントなどあります。面倒くさいことが嫌いな人は、これらに頼るのも一つの案です。
しかし、このように「日本語でできる選択肢を海外で選び続ける」というのは、海外生活の醍醐味を全てスキップしているのではないか、とも思うのです。
豪華ホテルのバイキングのような生活
そう、海外生活の醍醐味とは、サバイブする(自分の力で苦境を乗り越える)ことです。
こう書くと「大変だなあ…」と思うかもしれませんが、言い換えれば、海外生活とは「(生まれて初めて?)自分の意志で選んだ選択肢を生きられる経験」です。
変な言い方かもしれませんが、僕は正直、自分で選んで日本人として生まれ、日本で生活してきたわけではありません。
小学生の時、給食の献立を自分で選ぶことができなかったように、僕は常に与えられた選択肢の中で生きてきました。苦手なものがでてきても食べなきゃいけないし、残したら怒られたりします。
しかし海外生活では、
・どこに住むか
・どんな仕事をするか
・誰と友達になるか
こういった当たり前の出来事を、ゼロから自分の好きなように構築できます。
給食と比較するなら、「豪華ホテルのバイキング」のような生活です。
これは本当に夢があると思うのです。
多分、どんな選択肢を選んでも一定の「大変さ」がつきまといます。
だからこそ、その大変さを「やらなければいけないこと」ではなく「やりたいこと」に変換するマインドが大事なのだと思います。
上に挙げた「家探し」「携帯の契約」「仕事探し」どれも大変でしたが、豪華ホテルのバイキングのようだと思うことで、僕はすごく楽しめました。
また、これらの面倒くさいプロセスを、全て自分で、そして英語でやり遂げた今思うのは、「タフになったなあ」ということです。
精神的にすごく強くなったと思います。日本で生きるのすごく簡単だ!とさえ思うようになりました。
もともと自分でなんでもやるのが好きな人は心配いりませんが、「面倒くさいことが嫌いだ!」と思い込んでいる人も、「面倒くさいことこそが海外生活の醍醐味であり、価値があるんだ!成長できるんだ!」と思えば、プロセスを楽しめると思います。
まとめ②
留学は面倒くさいけれど、自分でカスタマイズした海外生活は人生においてかけがえのない経験であり、時間と手間をかけてでもやる価値が大いにある
留学は就活に有利か?
漠然と、英語ができていればいつか何かに役立ちそうだな…と思う方がいるかもしれません。
特にみなさんが大学生だったら「就活で言える!」と思うかもしれません。しかし、”1年間の語学留学”は、就活には有利にならないのではないかと思います。
なぜなら、
・1年間の語学留学だけでは、ビジネスで完璧に使えるほどの英語をマスターするのは難しい
・TOEICを伸ばすだけなら日本でできる
・今の時代、誰でもできてしまう“ただの語学留学”では差別化できない
から。
そういう意味でも、先ほど例に挙げたような「オリジナル留学」ができると、差別化できます。
「留学では英語の勉強と現地でのアルバイト経験を…」(これだと普通)
「食文化が好きなので、現地のレストランの中で日本人の口にあうものを特集し、記事にまとめ、Webサイトを自ら作り日本人観光客向けに発信していました」(差別化!)
「英語・海外が好き」という気持ちを忘れない
そしてもう一点。
今言ったように、漠然と「英語ができたらいつか何かに使えるな」くらいの気持ちではモチベーションが続かず、なかなか英語習得には結びつきません。
だからこそ、“将来役立つ” とかは一旦抜きにして、
“自分の口から英語が出てくる事実や、海外に住んでいる状況を、純粋に楽しむ”ようなマインドが大事だと思います。
おそらく、海外留学を考える多くの方が、「流暢に英語を話せる人」や「海外生活」に一度は憧れを抱いたことがあるのではないでしょうか。
だったら、就活に有利かどうかとかではなく、「自分がいつか憧れた生活に少しでも近づいている状況」を心から楽しむのです。
僕はカナダに住んでいましたが、“朝起きたらカナダ”という事実に、毎日少し興奮していました。
たとえこの生活が将来のキャリアに繋がらなくても、「一度でもカナダに住むことができた人生でよかった」と思うのです。
まとめ③
「就活に役立ちそうだから」ではなく、「英語・海外が好きだから」こそ海外に行くべき。
さいごに
最初に「留学しない方がいい人」の特徴をあえて挙げてみたりしましたが、本当の意味で「留学しない方がいい人」なんていません。
この記事で書いたことをまとめるなら、「受動的な留学」ではなく「能動的な留学」をしよう、ということです。
せっかく「海外に住んでみたい」というピュアな感情を一度でも抱いたのなら、「みんながしているから留学する」のではなく、「叶えたい生活のためにオリジナル留学をする」方を選んでほしいと思います。
色々書きましたが、「僕はカナダでデザイナーになる」というオリジナル留学を経験して、本当に人生が変わりました。
「語学学校に通わない」という選択をとることに怖さもないわけではありませんでしたが、それ以上に希望に満ち溢れた毎日でした。
この記事を読んでくださった多くの方が、それぞれの道をマイペースに切り開いていくことを心から願い、楽しみにしています。
追記
2020年1月に英語学習法の書籍を出版しました。
本には、
・5年間続けた「英語日記」勉強法
・カナダでフリーランスデザイナーとして働くまでの記録
・日本で留学する方法
など全て書き尽くしました。
この記事の何倍も、濃く、詳しく書いています。ここで出会えたのも縁なので、みなさんに読んできただけたら大変嬉しく思います!
→『英語日記BOY 海外で夢を叶える英語勉強法』(Amazon.co.jp)
Profile
Rio Arai 新井リオ
イラストレーター/作家/ミュージシャン
イラストレーターとしてAdobe CC Logo Remix、WIRED.jp連載イラストなどを手がける。著書『英語日記BOY』がAmazon英語の学習法ランキング1位を記録(現在12刷、7万部)。バンドPENs+のボーカルとして日本で4枚のCD、アメリカで1枚のレコードをリリース。
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ほんとにそうだと思いました!私も中学から英語ですが、小学生からビートルズに始まり本当に洋楽が大好きになりました!それから最初は真似してばかり、歌ってばかりだったのですが、これはどうゆう意味なんだろう?などこうゆう時に使うんだ!などと、海外ドラマや洋楽、海外の人々のYouTubeを見て学んでいきました。だから新井さんがおっしゃっていることは本当に理解できます。中一の時にアメリカにホームステイをして、もっと海外に行きたい!暮らしたい!ほかの国も世界の全部を自分の目で見てみたい!と思いました。また、社会でジェンダー論をやったりアメリカ史をやったり他のことについても興味をもてたので他に好きなことがあると断然モチベーションが上がるなと共感しました!勉強しているつもりもなくこんなことを楽しんで続けていると、いつしか帰国子女だと間違われるレベルにまで上がり、英語で口論して外国人に勝てるレベルにまでなりました。しかし、英語が喋れてもここで終わりではないと思っています。新井さんがおっしゃるとおり言語は一つのツールでしかないのでそれを使って何かをしたり考えたりすることが重要ということも思いました!いきなり長文失礼しました。私と同じことを考えている人にあまり出会ったことがないもので笑。高校生になったら留学するつもりです!!